ネット取引における課税問題

押しかけ評論 Vol.5 <ネット取引における課税問題>

 タイミング的にVol.5は再びイラク問題かと聞かれるのですが、確定申告の締切が迫っていることもあり、「ネット課税」について考えてみたいと思います。最も2月初旬から関連のレポートを収集し少しずつ書いていたもので、前回のVol.4<「格付け」と「Chapter 11」>はAMR/アメリカンのニュースを見てあわてて書いたもののです。(自分でも内容が稚拙かつ荒っぽいと十分認識していますのでご安心を。)

 さて、日本の場合、消費税は国税ですから意識することが全くないのですが、アメリカのように州によって売上税が異なる場合はネット取引への課税は大問題です。リアルの世界で売上税の安い州に買出しに行くわけですから、増大するECにおいて「節税」「徴税」は重要な問題です。2月上旬にイリノイ州がEC売上に対する売上税の納税を求めてウォルマート等6社を提訴しましたが、どんな内容か訴状を見てみたいものです。

 結論から言いますと「課税はされるべき。しかしすべてのネット取引を把握できる技術がなければ、公平な課税はできない」と考えます。インターネットが商取引に与える影響度を勘案すれば、WTOOECDの加盟国が早急に共同研究すべき重要な問題ではないでしょうか?

 アメリカでは、Internet Tax Freedom Act(1998/10施行、2回の効力延長により2003/11まで有効)によりネット取引に対する複合的、差別的な課税が禁止されています。ネット取引については課税そのものは禁止されていないものの、連邦政府は非課税の姿勢のため、成立当時のニュースを見ると、ウォールマートがネット販売業者を優遇するものだと反対キャンペーンの先頭に立っていました。
 衣料品を販売するBrooksBrothersのWebサイトおよび印刷されたパンフを見ると、購入者の居住する州によって売上税が決定されるようになっているようです。しかし、売上税の安い州にある「私書箱・転送業者」を使えば節税が可能です。当然ですが、EC業者、サーバーの所在地を課税拠点と考えるのも無理があります。所得の源泉の有無を判断するのに「恒久的施設」の概念があるため、サーバーの所在地を課税拠点とするという議論もありますが、低課税国がIDC(Internet Data Center)を基幹産業と位置づけ、国営企業で大々的に始めたら面白いと思うのは私だけでしょうか?

 1998/10のOECDオタワ閣僚会議で、ネット課税の問題が討議されていますが、問題点の指摘に終わっています。その後、具体的な対応策はOECDも含め、国際的な機関・機構から発表されていないようです。

 国際的なネット課税機構を設置し、全世界的に一律のネット取引税を課税し、販売者がこれを徴収。納税先国家を通じて課税機構に集中し、機構はトラフィック・取引内容データを集積・分析し、各国に配賦する、という夢のような方策でも採らない限り、公平な課税は不可能と感じます。