押しかけ評論 「靖国問題」

Vol.2 <靖国問題

 会社が九段下に近く、韓国企業との合弁事業を担当したこともあり、ここ数年はこれまでになく靖国神社というものを意識してきました。

 28日の予算委員会小泉首相が「死者に生前の罪まで着せて鞭打つ気持ちは日本人にはなじまない」という発言をされました。
日本が鎖国をしているならまだしも、世界屈指の経済力を持ち、サミット参加国である国の首脳の(公式の場での)発言としては、とてもお粗末であると感じました。ドイツのシュレーダー首相が同様の発言をしたとしたら、どうなることやら。。。

 昨今の靖国神社参拝問題には首をひねります。なぜ特定の宗教施設にいかなくてはならないのか?これは単に自民党の問題です。キーワードは日本遺族会と軍人恩給。軍人恩給は、戦後の支払い総額:約40兆円(!)と、自民党の大切な集票システムです。日本遺族会は大切な支援団体で、そこから参拝して欲しいといわれたら、いやとは言えない。
 ドイツ、イタリアといった敗戦国のケースをWebで調べていましたが、結局わかりませんでした。ドイツには軍人恩給制度があるような記載も見られましたが確認できませんでした。ご存知の方はご教示ください。個人的には負けた国が軍人恩給を支払うというのはどうも納得がいきません。

 公式な行事はすべて無宗教の「千鳥が淵戦没者墓苑」で行うべきという議論がされずに、福田康夫官房長官の私的懇談会「追悼・平和祈念碑等施設の在り方を考える懇談会」の最終報告書(2002年12月24日提出)では、新施設の必要性について「他国との共生を当然の前提としつつ、追憶と希望のメッセージを国家として内外に示す」「戦争の惨禍に深く思いを致し、不戦の誓いを新たにした上で平和を祈念する」などど説明されています。
どうして千鳥が淵とは別に新たに施設を作る必要があるのか理解できません。既にある施設(千鳥が淵)の定義を明確に再設定し、周辺国に説明することすらできないのでしょうか?

 戦後50年以上が経過して、日本はなお後処理に手間取っている感があります。その間に地域紛争とはいえ多くの戦争が起こり、また今、新たな戦争の危機が目前に迫っています。「戦争は究極の公共投資」という言葉がありますが、これほど無意味な投資はないと断言します。

* おまけ *  戦争指導者論
アメリカがF・ルーズベルト(最後の4ヶ月のみトルーマン)、イギリスがチャーチル、同じ枢軸国のドイツ、イタリアの場合でも、それぞれヒトラー
ムッソリーニ、と一人の指導者が大戦を通じて指揮を執っています。これに対して、日本の場合、日中戦争が始まった盧溝橋事件(1937年7月)からポツダム宣言受諾(1945年8月)までの間に、内閣総理大臣は7人、第34代〜第42代とめまぐるしく交代しています。私は明治憲法下でも天皇は実質的には象徴天皇であったという考え方をしていますので、日本の戦争指導は歴史に類を見ない「官僚によるもの」であったといえます。誰に責任があったのか判らない訳です。

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前回のVol.1<新幹線、台湾へ>に対しまして約20本のコメントをいただきました。ありがとうございます。私の勝手な評論(?)に比べ、はるかに論理的な見解もいただきましたので、今後、返信いただきましたコメントを転載、引用することをお許しいただければ幸いです。

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