押しかけ評論 「イラクの歴史をご存知ですか」

Vol.3 <イラクの歴史をご存知ですか?>

 米英による「必要か否かの検討がされない武力行使」がちらついている状況ですが、イラクの歴史をほとんど知らないため調べてみました。
 以下、駆け足でイラクの歴史を見てみますと、

(1) 紀元前6千年頃からシュメール人が世界で最初の都市文明を興し、紀元前18世紀にバビロニア王国、紀元前7世紀に新バビロニア王国が成立。古代メソポタミア文明の繁栄の地となった。
(2) アッバース朝(750〜1258年)がバグダッドを首都に定め(766年)、イスラム文化が興隆。
(3) その後、イル・ハーン、サファヴィー、オスマン・トルコ等の非アラブによる支配を経て、1920年のサンレモ会議から英国の委任統治下となる。
(4) 1921年、英国植民地省が、イラクペルシャ湾進出を阻止するため、バスラ地方からクウェートを分離。

ちょっと飛んで、
(5) 1955年 米国の支援を受け反共・反ソ連軍事同盟である「バグダッド条約機構」を結成。
(6) 1958年 共和国革命。王政を破棄しイラク共和国を宣言。西側資本の国有化など民族主義政策を開始。
(7) 1959年 バグダッド条約機構から脱退。
(8) 1961年 クウェート独立。
(9) 1963年 バース党の指導する軍事クーデター。カーシム民族主義政権崩壊。共産党色の強いカセム政権を嫌う米CIAが支援。
(10) 1967年 アメリカと国交断絶。
(11) 1968年 バクル将軍により現バース党政権樹立。
(12) 1972年 イラク政府が石油の国有化を宣言。米国、イラクをテロリスト支援国家に指定。
(13) 1972年 イラクソ連との間に友好条約締結。
(14) 1979年7月 バクル大統領引退、現フセイン大統領就任。
(15) 1980年9月 イラン・イラク戦争勃発。「イスラム革命の輸出」政策をとるイランに対し、イラクが宣戦布告。イスラム革命の波及をおそれたアラブ諸国や欧米諸国はイラクを支援。
(16) 1980年9月〜1988年8月 イラン・イラク紛争。(国連安保理決議#598に従い停戦)
(17) 1990年8月 クウェート侵攻
(18) 1991年1月〜2月 多国籍軍による対イラク武力行使。(国連安保理決議#687に従い停戦)

 「バグダッド条約機構」という言葉は、はるか昔に学校で習ったような気がします。加盟国は英国、トルコ、イラン、イラクパキスタンで、米国はオブザーバー。中東におけるNATOを目指したものです。

 防波堤としてのクウェートの分離・独立、バクダッド条約機構の結成、米国との国交断絶、イラン封じ込めのための欧米の後押しなど、パレスチナアフガニスタンと同様、メソポタミアの地でも英米のご都合主義に振り回された挙句に、米英に叩かれるという不毛な連鎖が起こっています。

 いま、なぜイラクを攻撃する必要があるのか、歴史を振り返りながら考えてほしいものです。