ディーゼルエンジンを考える

押しかけ評論 Vol.8 <ディーゼルエンジンを考える>

 Vol.7から1ヶ月以上あいてしまいました。ネタ切れか?というお問い合わせもいただきましたが、いえいえ、そんなことはございません。

 東京都は、今年10月から粒子状物質(PM)排出基準に合わないバス、トラックを締め出すとのこと。石原都知事の発言を聞いているとディーゼルエンジンが悪いような言い方(表現や気性の影響が大きいのですが・・・)をしていますが、ヨーロッパではディーゼルが高く評価されいるのは周知の事実です。
 どうも根本的に視点が違うようなので、客観的にディーゼルエンジンについて考えてみたいと思います。
 現在の自動車用エンジンのほとんどはガソリンかディーゼルです。この2種類のエンジンの排出物質の特徴を簡単に列記しますと、
ディーゼルエンジン
 長所 : CO2、CO、HC(炭化水素)の排出量が少ないこと
 短所 : NOx・PMを多く排出すること
 ガソリンエンジン
  長所 : PMの排出量がわずかなこと
 短所 : CO2、CO、HCの排出量が多いこと

 ガソリン乗用車などでは触媒コンバーターなど排気ガスの後処理技術が確立されており、CO、HC、NOxが問題の無いレベルまで低減されています。ディーゼルエンジンでは、EGR(排出ガス再循環装置)等が実用化されていますが、NOxとPMの両者を抑えることはかなり高いレベルの技術が必要なようです。NOxは完全燃焼状態になると生成されやすく、反対にPMは不完全燃焼状態で生成されるというのが原因で、トレードオフになっています。

 歴史的建造物や森林、湖沼などへの酸性雨の被害が深刻化しているヨーロッパでは、地球規模の環境汚染問題に対する関心が高く、環境保護の思想も広く浸透しています。また、地球温暖化に対しても、これによって引き起こされる海面の上昇が国土に大きな影響をもたらすオランダやベネチアなどで特に強い危機感が持たれています。(ベネチアでは水没対策として干潟の入り口に浮上式の堰の建設を開始しました。ご興味ある方は「Mose Project」で検索してください)
 このため、地球温暖化の主たる原因であるCO2に対する関心は日本以上に高いものがあり、このためディーゼルエンジン車はCO2の排出量が少ないことをはじめ、経済性、耐久・信頼性が評価され、注目を集めています。フランスでは乗用車の40%がディーゼルとのこと。日本の自動車メーカーもヨーロッパ市場ではせっせとディーゼルエンジン搭載車を投入し、エンジンを他社に供給しています。

 日本の自動車メーカーはディーゼルエンジンについて、国内で声を大にして議論をするべきではないでしょうか?