バチカンという国

 会社から在日ローマ法王庁大使館が見えます。普段は人、車とも出入りがほとんどない、ひっそりとした公館ですが、さすがに頻繁に出入りがあります。法王が亡くなったというニュースを3日早朝のCNNで見たのはチャンギ空港。泣いている人は見ませんでしたが、多くの人がTVモニターに見入っていました。

 国家の名称はバチカン市国ですから、バチカン市国大使館が正式名称かと思いきや、公式に『ローマ法王庁大使館・総領事館』となっています。
 バチカン市国ローマ法王国家元首とし、首相や外務大臣もいる立派な国家です。公用語ラテン語、外交用言語はフランス語、一般言語はイタリア語という奇妙な言語制度を持っていますが、ラテン語公用語にしているのは世界中にこの国だけのようです。
 カラフルな制服をまとった衛兵はスイス人で、一般には「スイス衛兵」と言われますが、つまりはスイス人傭兵。時計を始めとする精密機械産業が確立する以前のスイスは貧しく、傭兵で稼ぐ国で、第一次世界大戦で独仏それぞれに雇われたスイス人同士が戦った場面もあったようです。もっともバチカンでは戦力ではなく、身辺警護と儀じょう隊としての機能しかありません。

 これまでまったく縁がなかったバチカンですが、この数日の間に感じたのは 正義に基づく世界平和の確立と人心道義の昂揚を外交目標とするバチカンの志は高く、世界に対する影響力は恐ろしいほど高く責任は重い、と言うことです。